「だったら治療なんてしなけりゃ良かった」
と、自室で泣いて暴れる下りは胸に迫りました。ですよね、お金も時間もかけて苦しい思いをして、治らなかったなんて……。
「お父さん」
と呼ぶ人に会いにいき、妻にも中学生の娘にも歓迎はされているものの不思議な他人行儀。
家を建てて以来、ずっと使われていない雫の部屋があるというこの家は……?そうか、両親を亡くしたあと引き取ってくれた叔父=お父さんだったのね。お互いに遠慮があって、癌のことも余命のことも告げずにただ楽しい時間を過ごして帰ろうとする雫。そして、あの部屋はもう娘ちゃんが使って、なんていう29歳は、 そりゃあ結婚するんだと思われてしまいます。優しいから悲しい。
連絡船で渡った島には、白髪混じりの長い長い髪をおさげにしてメイドスタイルの丁寧なご婦人、自称マドンナ(鈴木京香)がお出迎え。雫の服や持ち物の風合いもどれも素敵なのですが、辿り着いたホスピスも、迎えの車から調度品から壁紙、ベッドやカーテンのファブリックに至るまでまあお洒落で目がくらみます。こ、こんなコテージで何週間か過ごしたい……。
投書箱にはおやつの希望を入れて。
今週のチョココロネをリクエストしたのは先週亡くなった人。連れてきた犬六花を、そのまま飼ってくれるホスピスに感謝を。そして、六花はきっと大好きだった私のベッドにこれからも来てしまいでしょうからごめんなさい、と次に入居する人への謝罪を。……って、それ雫さんだよおおおおお
部屋に入るなり白いむくむくの犬が戯れてきて、一緒に散歩もして、途中で行方不明になったけど親切な農夫さん太陽地(タヒチ 竜星涼)の畑で見つかって
「飼い主さんとよくここに来てたから」
と言われてた、その飼い主さんてほんの先週お隠れに? そして当然それは雫たちの未来でもあるでしょう。
美しい自然と、優しい人々と、おしゃれにも程がある空間と、すぐそこに見え隠れする死。
もう何かと感情が追いついて行きません。
気さくなタヒチくんに『元気なら恋しちゃったかも』と浮かれる雫さんで、別にそれを誰が咎めるわけでもありませんが……タヒチさんの方は、この施設に次々と来る人の共通点を知っているの?知ってて、お酒に誘ったり朗らかに声をかけたりできてるの? そこも分からない…。みなさん普通のおつきあいを望むのだとしても、次々と知り合っては亡くなって行かれたら心がもたないわ……。