2020年クリスマスの東京国際フォーラムで開催されたそうです。
俳優さんに初見の台本を、いきなり舞台上で読んでもらいましょう!という鬼のような企画で(笑) 演技以前に、漢字読めない人は大恥かきますよねえ。
しかし岩井氏は舞台人として常々この、演技プランなど考え始める前の読み合わせが1番面白いと思っているのだとか。贅沢にもそこを覗き見させてくれたwowowありがとう!
壇上に離して置かれた事務机&パイプ椅子に座る5人。私服。照明も特に工夫なく。背景スクリーン下半分は演者それぞれのアップ、上半分には司会進行岩井氏の手元の台本(横書き)がスクロールされていきます。
そしてタイトルも知らされずに読み始められたのは、病院に保護された男真治と、迎えにきた妻鳴海との噛み合わないやりとり。真治の記憶喪失を、浮気の誤魔化しかと疑っている鳴海なのですが……。
たまたま映画を見ている私は、この時点で演者さん達よりも先を知っていますw(映画「散歩する侵略者」弊レビューこちら。wowow版「予兆」はこちら です)
配役は誰から始まったっけ。そう、岩井氏の指示で役は性別も気にせずくるくる変わり、時に巻き戻されて別配役でもう一回? ニュースキャスターをしたかと思えば親戚に医者に記者に宇宙人にと皆、大忙しです(スクリーン頭上にその時の役名が表示されます。親切!)
演出は言葉遣いを「ヤンキーで」と指示しつつ心の声ナレーションは普通に読ませてみたり、片言や棒読みを勧めたり、もっとゆっくりさせてみたりなどなど。試してそぐわなければ止め、面白いです。ちょっとの指示変更でも演技って変わるものですね。
そして来ました、衝撃の
『概念の吸い取り』
そう、実は宇宙人な真治はヒトの概念を調べるのが地球に来た目的。吸い取られたヒトは2度とそれを理解できない。例えば家族。例えば仕事、経済……。街には断片的に何かを忘れ、生活に支障をきたした病人が増えていく……。
宇宙人、ガイド、概念!
これ、台本だけでスッと分かるものですか?
『聞いてるだけの方が理解出来る』
とそこで出番の無かった大倉孝二。でしょうねえ、と以後は意識的に配役を替えて場面リピートが行われます。
(男女が入れ替わるのも新鮮ですが、神木隆之介の「お父さん」はレアかも。歯が無いw 抜け歯の本数も自由自在! 小生意気宇宙人はハマってました)
終盤、夫婦で逃避行。
もう地球を去る=死ぬと平然と語る真治に、「愛」を教えると提案する鳴海。
本来、ガイドに選んだヒトの概念は吸わないのですが。他人から「愛」は得られない、と説得する鳴海の意思は堅く熱いのです。世界でただ1人、真治を愛している今の鳴海だけが真治に「愛」を伝えられる!なのに真治が去ってしまうなら、鳴海は「愛」を失っている方が悲しまずに済むじゃ無いですか、win-win!
この熱い愛の場面を、即興で双方一人称オレの男同士にしてみたり出来るのも、読み合わせならではでしたね!
そして配役を変え、松氏の健気な鳴海と大倉氏のイケメンな真治が丁々発止!さあ、愛を知って震える宇宙人の涙は。それに笑い転げる鳴海は、どうなるのか??
「ハイ、終了〜!」
なんとこの企画、最後まで読まない決まりがあるそうです!めちゃ良いところで切られた演者さん達、叫びながら台本の先をめくっていましたよ? 渡された本はどこまであるんでしょう??続きが気になりますよねえ(笑)
次々と配役を指示して、演出もしつつタイムキーパーもしていた岩井氏は大変です。そこを神木氏、後藤氏は自由にやらかすことで。松氏はベテランの落ち着きで、大倉氏はベテランのツッコミでと、それぞれに盛り上げてサポートしたのかも。仕上がった映画も最初はこうだったかと重ねるとまた趣深く楽しかったです。
色んな人で、色んな本でもっと見たいですねえ。推しでならなお良し!
wowowでTV版が始まっているそうです☆