コロナ禍で昨年は上演禁止になり涙を飲んだ舞台が、なんと同キャストで再企画。無事上演され、配信もあって遠く大阪から無事見ることが出来ました!おめでとう!ありがとう!
さて物語は原作と骨子変わらず。小説と同じ台詞もあちこちに。
(出版当時の「蟻地獄」ベタ褒め弊レビューこちら)
払われた枝葉で個人的に一番残念だったのは、冒頭のアリジゴク飼育観察でしょうか。確かになくてもいいっちゃいいのですが、ここを削ると以降の蟻や砂やウスバカゲロウに例える地の文描写も消え、下手するとアリジゴクという虫の存在を知らない人もいるかもで、タイトル「蟻地獄」が謎ワードに? 映画化の際には、そこを足せるといいですね!
<あらすじ>
イカサマでひと儲けを企んだニート孝次郎(高橋祐理)と修平(近藤廉)だったが、タレコミで捕まり修平を人質に取られ
「5日以内に300万円もってこい」
と裏カジノ支配人の柏木(山口大地)に脅される。間に合わなければ、全身の臓器を売られる修平の命がない。悩んだ末、樹海でトンデモ金策を思いついた孝次郎だったがそうそう自殺者は転がっておらずw そこで閃いたもっと確実な方法とは……?
という、そもそも主人公からしてかなりクズで共感し難いはずなのに、タイムリミットが明確且つ友人を見捨てる選択だけは絶対にあり得ない「走れメロス」な設定でぐいぐい魅せます。
大柄で能天気な相棒修平の横で、小柄で細身な頭脳派コウジ=孝次郎。何するにしろ、相手はああでこう来る、オヤジはこう言ったけどこう考えてるはず、と裏や経緯をめちゃ考えているタイプで(ファンとしては原作者の分身として捉えて萌えるw)、逆に下に見た相手を侮ってこんな窮地に陥ったり深読みを外したりと、完璧からは程遠くて憎めないんですよねえ。家族仲も良くて。
そんな、独白も長くほぼ出ずっぱりの孝次郎を演じた高橋祐理くん、演技経験も浅いのに滑舌も良く、危なげなく演じきってくれました(予定通り去年上演されていたら、いきなりの初主演!出来ると当時見込まれたのも凄いですが、きっと1年で更に成長していたことでしょう)
ずっと監禁で出番は少ないものの笑顔と体型で目立った修平役近藤廉は、え、円盤投げで高校日本一だったの? やだインターハイで見てたかもw
他に印象的だったのは、柏木のイケボ恫喝と高笑いですね! 配信を見ている居間に響き渡りましたw キモ枠フジシロ役には天津の向。お見事☆
そのほか、後半のキャストには触れ辛いので困ったなw
美女マフユに乃木坂の向井葉月、少年ケイタに古賀瑠、イケメン宮内に天野浩成。タレコミ男に迫英雄。
舞台観賞後に小説を再読。舞台化に際してかなり変えた、と板さんが言っていましたが改変というよりは省略、原作の完成度の高さよ。もちろん拙い部分もあって主に説明過剰、キャラのニアミスを作中で逐一答え合わせなんて(一応物語上も会話の長さに意味はあるものの)せっかく考えたので全てを書き込みました感ですよね。小説なら読み返せても、セリフとして耳で聞くのは辛かったでしょうから削除は英断でした。それでもカーテンコールの板さん、役者さんに長台詞を謝罪してましたけど、原作のままなら軽く倍はありましたよね!
そう、千秋楽ではカーテンコールに板さんも登壇。長い長いメモ持参で、脇役さんからも一人一人にエピソードを語りボケて落として。この仕事に掛けた想いに胸を熱くしましたよ。主演祐理くんをぴょん呼び、乃木坂アイドルとは謎のノリw いい現場だったようでよかったです! 映画化の話題にも「そりゃ、出来るならしたいよ!」と、実はボケ以外では思ってもいない安請け合いはできない真面目さんでw 本当にしたいでしょうねえ。いつか案外有り得るかも? それとも他作品の舞台化?
次の展開を期待しつつ、今はパンフレットの到着を待ちます☆
(美麗パンフ!!! 写真集を買ったかのような出来栄えでした! 舞台のパンフって実際の衣装写真が無いことが多くて設計ラフ画だけだったりするのにね。延期のおかげかファン層のニーズを汲んだのかw あと板さんが宣材写真でなく撮り下ろし! 対談もあって読み応えもバッチリでした)