京都発地域ドラマ。
とはいっても、観光客を呼ぶ京都らしさなどどこにもない、ヒリヒリと痛い青い物語でした。
ここに住みたい
と、寮で志望校を決めるなんてことがあるんですね。築100年を超えるオンボロもボロボロの近衛寮。もうどっからどう見ても京都大学の吉田寮ですw そして本家同様に、取り壊したい大学側と、補強で乗り切りたい学生側とが延々と折衝を続けているという図式。
自治を標榜し、なんでも話し合いで決める寮生たち。学校側とも延々と話し合い、良い返事をもらったと思えば撤回され、詰め寄れば責任者が倒れ。それでも、話し合いとは真摯に行われるものでその先には相互理解があると思っていた学生側はやはり無邪気だったのでしょう。時間も予算も有限なのですよ……。
学生の要望を受け取る、学生課。ある日そこに文字通り壁が築かれ、職員とのやりとりはガラスの壁越しに行われるように。そして、寮生の要望を受け流していたいつもの事務員さん(山村紅葉)ではなく、美女(成海璃子)が現れて応対します。すると言葉につまり、無言で立ち去る代表三船(中崎敏)動揺する生徒群の中、志村(岡山天音)だけが気づくのです。恋が始まった!……のではないことにw
廃寮の危機感に焦れ、寮の活動に不満爆発のマサラ(三村和敬)が1回生。記録係のキューピー(須藤蓮)が3回三船志村が4回? 学年が違ってもタメ口なので混乱します。しかしその、年齢や学年で上下を決めない『敬語禁止』が寮のモットーなんだとか。廃墟寸前の寮のボロボロ具合、その中でのやりたい放題には本当に驚かされます。き、汚い……。女生徒もいるとかマジか。私も寮暮らしはしましたが、さすがに個室に鍵はあったし、共有スペースにこたつも万年床もありませんでしたわ~。積んだままの本が旧字体、さすが築100年(^^;;;)いつからあるのw ゴキブリどころかネズミもいそうですよ。
でもそれぞれの理由で寮に惹かれ、集まってきている生徒たちはもちまえの小賢しさで自分たちの城を守りたいのです。
なのに代打の美女をきっかけに、『いつかラスボスと対決だと思っていたのに、最前列の小物が入れ替わるだけと気づいてしまった』という志村。その美女が、突然寮に現れたと思ったら、なんと三船姉だったそうですよ。美女の胸、でなく名札を見ていた志村だけは気づいてましたけど。そしてなんと卒業生。大学院まで行きながら、学問は諦めて派遣で事務員ですか……。そして裏事情を告げることには、寮の建替理由は安全などではなく跡地利用で。補助金を目当てに講義棟が建つことがほぼ決定、なんだそうですよ。結局金なのかー!
酔いつぶれたマサラは、寮を守れと誰かれ絞めあげては騒ぎ
『ここが無くなったら、行くところがない』
と泣くのですが……。金も力もない若造たちに、一体なにができるでしょう。
本の山が崩れて現れたのは、床の間と掛け軸。まさかのドレッド(若葉竜也)が慣れた手つきで茶をたてて、せめてもの一服です。全国から集まったか、京都弁など誰も話さない学生たちが見せた、京都らしさったらこの暁の茶事ぐらいだったでしょうか。
えええ、そのまま解決ゼロで終わっちゃいましたよ!
近衛寮はそれぞれの心の中に息づいて、9月には解体されて永遠にさようならですか。ラストシーンのごった煮楽団、三味線とトランペットとほうきとチリトリが合奏しカエルが合いの手を入れる楽しいイベントは一体なんだったのでしょうw いつもの地域発ドラマらしさはゼロでしたが、引き込まれて緊張感に息を飲みました。脚本は朝ドラ「カーネーション」の人だったとか、なるほど。
彼らのその後が見たいです。
コメント一覧 (5)
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- 2018年09月01日 00:41
- >>TMさま
熱いコメントをありがとうございます。吉田寮関係者の方なのでしょうか。
そうですね、近衛寮生も戦い続けていることでしょう。
また再放送もあるそうです。ドラマをきっかけに問題を知り、学生側にたって考えようになる人がまた増えますね。
悔いのない9月でありますように。
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- 2018年09月01日 12:30
- お察しの通り吉田寮関係者です(笑)
吉田寮も近衛寮も心底愛おしく感じています。片思いと言われたらたしかにそうかもしれません。なんとかこの世に残せるよう頑張ります。
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- 2018年09月05日 19:29
- >>TM
台風、ご無事でしたでしょうか。
寮に片思い!なんと切ない。両思いを、の表現が適切なのか分かりませんが……応援しています。
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- 2018年09月06日 01:48
- 台風では中庭と寮裏の樹木が数本、寮舎の屋根に倒れかかりました。寮舎の屋根が若干損傷しましたが、それ以外の被害はなく、負傷者もいません。樹木は数日以内に撤去され、屋根も専門家の指導のもと修理されるでしょう。吉田寮は近代日本の木造学校建築の集大成とも言える建物で、見た目に反して非常に頑丈です。この程度の台風では飛びません!ご心配ありがとうございました。
この吉田寮についても、大学当局が寮生に今年9月末までの退去を命じており、現在廃寮の危機にあります。敬語を使わないという文化や、歴史的な経緯も近衛寮のそれと全く同じです。
ただ、寮生は大学当局の方針に反対しており、廃寮反対運動を推進しています。このドラマも吉田寮生の全面協力で製作されましたから(エキストラに寮生が大勢出演しています)、運動の一貫と言えるでしょう。
「暁の茶会」のあとで、近衛寮生がどのような選択をしたのかは非常に気になるところです。無理を悟って諦めるのかもしれませんし、無理を承知で最後まで抵抗するのかもしれません。視聴者の想像に任されます。
しかし吉田寮生は後者を選択し、今この瞬間も戦い続けています。ですから近衛寮生も恐らく同じ道を進んだのではないかと、わたしは思うのです。