悪趣味で、満足。
流血や死体描写は納得づくで鑑賞の、原作既読派です。それより喰種(グール)になった窪田正孝が食事が出来ず、でも飢えてあれこれ口に入れては吐き散らす場面の方が、すると分かって見ていても辛かったですね。なにしろ死体は作り物でしょうが、吐かれるハンバーグやサンドイッチ、牛乳、野菜は本物ですもんねえ……。
戦闘場面も、決め技は生身よりCG触手(赫子かぐね)がお仕事するのでむしろガチバンシリーズより動かないぐらい。飢餓や狂気は熱演ですが、ただ窪田正孝を鑑賞したい向きにはお勧めできないかもです。作者が推しただけあって、はまり役で素敵なんですけどねえ。血まみれですからねえ。そして人肉を囓る清水富美加には、これで出家しちゃったのねえと複雑な気持ちに。
というわけで主人公金木(窪田正孝)は読書好きの非モテ大学生。
憧れのお姉さまリゼ(蒼井優)にやっと声をかけ、初デートにこぎつけた……と思ったら、彼女の正体は喰種。抱擁から肩を食いちぎられ、逃げ惑う金木を笑顔で狩る彼女の、背から生えた触手に貫かれた刹那。リゼは落ちてきた鉄骨の下敷きになり死亡。病院で目覚めた金木には、損傷した部位の代わりにそのリゼの内臓が移植されたというのでした……!
その後、人間の食べ物を口にしても吐き、目が赤く光り、段々と喰種になっていく金木は、喰種対策局の捜査官たちに追われる身に。金木の他にも、ヒトを殺せない喰種は存在し否応無く狩られていきます。ヒトと喰種、世界を歪めているのはどちらだというのか?
もちろん大喰いリゼや、裏路地を喰い場にし大学で金木たちを襲うような人殺し喰種がいるから対策局があるわけですが。
喫茶『あんていく』に集う喰種は穏健派で、飢えた金木を匿い雇い、珈琲で飢えをまぎらわす術を教えてくれます(金木のウエイター姿最高)
店にはヒトの客も喰種の客もいて、平和。喫茶バイトの喰種トーカ(清水富美加)なんて高校に通い、少食を心配して手料理を作ってくれるヒトのお友達までいるんですよ……。吐かずに頑張って喰べていて泣けます。また、店が都合するブロック肉も自殺遺体由来。それで暮らしている客、笛口母娘なんて優しげで、罪がないじゃないですか。
花柄ワンピの娘喰種ヒナミちゃん(桜田ひより)が素直で可愛くて、なのに自分の食事に胸を痛めていて可哀そう……。
家族を悼む気持ちが喰種にだってあるんです。なのに、それを利用して番いを捕まえようだの、笛口母(相田翔子)を、その夫の赫子由来の武器(クインケ)で殺そうだのと、人間の捜査官の方がよほど人非人です。特に真戸(大泉洋)が、白髪と相まって変態度増し増しで好演ですね(そして相棒捜査官亜門は、綺麗な麒麟川島。ウソ、鈴木伸之なんですが、いつにない髪型とスーツで漫才師感がねw)
母が命がけで助けたヒナミを、それでも追う喰種対策局。
「寄生獣」では死ねばお終いでしたが、喰種の死体はクインケ等に利用していると聞くと、君ら素材欲しさに喰種殺しているのでは、とちょっと思ってしまったり。勿論、真戸の指輪や墓石などに示唆される、それぞれの歴史もある筈とはいえ……とりあえず映画版においては対策局の方が殺し屋にみえます。
捜査員草間(前野朋哉)の殉職に、泣き崩れる母上はお可哀そうですけど、笛口家は遺体を持ち去られ加工され、弔うこともできてないのにと思っちゃうじゃないですか。挙句、ヒナミちゃんを今度はお母さん由来のクインケで狩ろうとするなんて、また真戸は。
結局、作中でヒトが倒す喰種は共存を望んでいた優しい人ばかり。もっと培養人肉を提供するとか、喰種対策局も方針を考えないと潰し合うばかりなのにそんな未来は示さずに終了。リゼ→金木への無茶な移植の背景とか、みんな大好き高槻泉の小説についてとか、入れたくなりそうなのに、よく我慢しましたよね。それでも、病院で目覚めた親友ヒデは、金木が返したノートを見て何を思うのか。続編に余地を残し……でもこの先は金木もヒト離れしグロ度跳ね上がりますしねえ……。
「生きてていいのかな」
と問うヒナミちゃんを肯定し、自らも亜門にトドメを刺せない優しいカネキ。平穏を取り戻す『あんていく』……映像化はこの辺まででギリでしょうか(^^;;;)
赫子が出ると、多分破れている喰種たちの背中……金木マスクの口元ジッパーも実用的でちょっと笑ってしまいましたw漫画やアニメだとスルーな部分、実写だとやはり気になりますね。でも良い実写化でした。