そう来たかー。
広沢がつきあっていた『カワちゃん』こと川辺さんは、美穂子だった!

いや正直、誰に裏切られたら一番イヤかを考えたら彼女はずっと怪しいポジションでしたけども、独身で隠キャの深瀬だから簡単に騙されていそうと思っていたら。なんと村井とは選挙事務所ボランティアで、谷原とは野球チームのマスコットガールでと、むしろ深瀬より先に近づいていたんじゃないですか。怖い。
ただ妹ちゃんの回想で、恋人を語る時の広沢くんが幸せそうじゃなかった、のだそうですよ。同郷の友人がよくデートに付き合わされて3人で……と語ったことからも、実は世間が思うような恋人同士ではなかったのかも。
そして美穂子を襲った男が、全然告発文とは関係がなかったように、彼女も誰かに誘われてそうなっただけでまだまだ仕掛けがあるのかも。かも。かも。

『みんなの心に、それぞれの広沢がいる』

事件をきっかけに改めて調べていくと、深瀬が思っていた『誰にでも好かれる素敵な広沢』は確かに野球も上手くて人気者で地元でも慕われていた反面
『誰にでも優しく、それが相手を傷つける』
とちょっとつきあって別れた同級生に思われていたり。浅見も内心
『自分より、広沢のほうが家庭教師で結果を出していた』
と当時妬ましく思っていたり。必ずしも好かれてばかりいたわけじゃなかった。それでも、自分さえ我慢して丸く収まれば……と思いがちだったところは、確かに事故につながりましたよね。
別荘で宴会。皆アルコールが入った中、それでも駅まで運転して迎えに行くのなら、内定が決まっていない自分がいけばいい、と。
でもその後、連絡がつかなくなった間に何があったのか。
車が谷底に落ちた、その手前にあった血痕は本当に広沢のものだったのか。
谷原が捨てたという、キーホルダーの持ち主は。
走り去ったという赤いダウンの人物は本当に村井だったのか。
ずいぶん下流で見つかった広沢の遺体。本当にただ、流されたのか?

そんなこんなが、10年も経て明らかになるのでしょうか。
でも広沢の生まれ故郷を訪れればまだ、深瀬たちは『人殺し』のまま。決して事件は遠い遠い昔のことではないともいえますねえ。

一見おちゃらけて見える村井が、左遷されても辞めずにしがみついているのは……、広沢を犠牲にしてまで就職した会社だったから。酒を断った浅見だけが何かを諦めていたわけじゃなかった、そんな風に何度でも様々な角度から語られる
『見えている一面だけがその人の全てではない』
というモチーフの行き先が気になります。
一番まさかなのは、広沢がどこかで生きてることですが、さすがにそれはw 湊かなえなら、一番驚くことよりも一番イヤなことが起きるはずw