山形発地域ドラマ。
誰もが知る名作「泣いた赤鬼」と主人公の学生時代をリンクさせて描く再会と再生。
田園の美しさ、人々の暮らしの豊かさの描写の中に、さりげなく名産のぶどうデラウェアやワイン、更に貴腐ワインを作る苦労も織り込み「飲んでみたいなあ」と思わせるとはニクい脚本です。トンネルを抜けると広がる不思議空間も、採石所かなあと調べたらなるほど、高畠石が有名なんですね。実際コンサートや芋煮会wに使われているそうで、ドラマ内でもトランペットの練習にワイン蔵にと印象的な場所。作者浜田廣介の記念館と合わせて『瓜破石庭公園』是非訪れてみたくなります。そしてお土産は貴腐ワインw 
作中イベントで出版されていた中学生作の「続・泣いた赤鬼」も購入できたら完璧ですね

<物語>
東京の出版社で働く主人公辻村莉子(村川絵梨)は、故郷の高畠町に呼ばれ町おこしイベントに協力することに。地元の名士浜田広介作「泣いた赤おに」の続編を募集、絵本を出版しようというのだ。
しかしすっかり東京弁で喋るようになった莉子は、熱心な担当者にも同級生の集いにも心開かず、特に「変わり者」と評される夏目(木南晴夏)の話題になると表情を硬くする。
その昔、いじめから助けてくれた夏目を裏切り、自分は元通りの女子グループに戻れた代わり彼女は学校に来なくなってしまったのだ。今はひとり家業を継いだ彼女と「泣いた赤鬼」の青おにを重ね、自分のせいで夢を諦め不幸に暮らしているのかと、後ろめたく思う莉子。また出版も当初の理想では売れないと、公募作品でなく有名作家を強引に登用するのだが……。
思い出の場所で再会した夏目は目を輝かせてワイン造りを語る。
恨まれていると思い込み、いつまでも時を止めて昔のことばかり考えていたのは自分だったと泣く莉子に夏目は、それも必要な時間だったんだよと、ゆっくりと美味しさを増す貴腐ワインを差し出すのだった。
「辻村さんの時間は、止まっていたんじゃなくて、熟成してたんじゃないかな」


賑わうイベント当日、出版されたのは中学生が描いた公募作。東京へ戻る莉子は、旅人のために置かれた「休め石」に腰を下ろして喧嘩別れした恋人(真島秀和)に電話をかける。土産のワインを一緒に飲もうと。

そういえば、地元出身でもないのに妙に熱心な担当さん(中島歩)とは恋でも始まるかと思ったらサラッと別れましたねw 
いじめてたことなんて忘れて夏目のワインを飲んでいる同級生(馬場園梓 他)にはちょっと腹たちましたけど、そんなものかも。かえって、ひとりそこにこだわっていた莉子が前を向けばすべて過去のことになるのかも。なにしろ夏目本人がもう歩き出しているのですから。
高校時代の夏目を演じた上白石萌歌も良かったです。