「あんた、馬鹿なのか?」「僕の言葉は絶対だ」
と他科の医者に喧嘩を売りまくるのは病理科の医師、岸京一郎。診察をしない、白衣を着ない病理医にスポットをあてた、珍しい医者ドラマが始まりました。
離島の「Dr.コトー」ならともかく、「医龍」「ドクターX」およそどの名医だって血液検査や細胞診組織診の結果を受けて診断しているんですからね、名医の陰に名病理医あり!
しかし「私、失敗しないので」とがっぽり稼ぐフリーランス外科医と違い、病理科は金を稼げないのでお荷物扱い。そもそも岸の意見を聞く気がない医師もいて、あんまりうるさいなら外注にしちゃうぞと脅される始末。
医師のメンツと患者の命が、私たちの知らないところで天秤にかけられてますよー!

……という原作のファンで、ずっとドラマ向きだと思っていましたので楽しみです。長瀬も「クロコーチ」からはずいぶん痩せてナイス岸先生。

でも物語の主人公は、岸の薫陶を受けて成長していく新米女医の宮崎(武井咲)ですよね。
先輩医師の診断に疑問を持ったものの言い出せず、岸に相談して挑発されw 『患者のために』と犯罪すれすれ(いや、犯罪?)のパスワード盗用までして検査条項を書き換え……結果、病理科見習いに志願してやってくるという変わり種。
「階段から落ちた」のが、足を踏み外したのか、すでに失神して崩れ落ちたのかが重要な診断ポイントに。そんな推理、医者の仕事じゃないよって言われたらそれまでですが、彼女の捨て身の調査と書き換えがなかったら、この女子高生死んでたねって思うと怖すぎる展開です。なのに、名医だねと尊敬されるのは誤診をした……というか予断での診断に疑問をもたなかった先輩医師。
次の癌患者でも、あるはずの癌をないないと言い張る担当医(手塚とおる)との対決で、山のような可能性から答えを出したのは岸なのに、感謝されるのは効かない化学療法のまま退院させた担当医になるんでしょう。

しかし、もちろん病理医が全能と言ってるわけでもなく。
見習い宮崎が渡されたプレパラートの組織は、どの病気だと断定できない、してはいけない代物。そんな危うさを自覚しながら真実を探すのが病理医だ!と。しびれますね~。

やけに岸に絡む婦人科医にマダム小雪。岸の師匠筋な教授に北大路欣也。病理科の有能検査技師森井くん(野村周平)には、語りたくない過去が。さてまだ4冊(もうすぐ5冊目発行)しかない原作をどこまで映像化してくるのでしょう。どこをとっても爆弾なので、泣かせに走らずにドライにやって欲しいものです。