面白すぎるよ、板さん!
インパルス板倉俊之の小説第2弾。
前作「トリガー」が殺人許可など異世界設定で悪ぶり感があったのに対し、今回は普通の若者が犯罪に巻き込まれ(もとい自業自得で首をつっこみ)四苦八苦するという、もっと身近?な物語になっています。
寒がりで頭脳派で19才で無職の主人公。
ファンなら19才当時バイト暮らしだった板倉さんを重ねずにいられませんよねw(暑がりでおデブな友人は幼なじみがモデルだそうですが、私の脳内映像ではつっつんです)
5日で300万円つくらないと友人が殺される!
そんな無茶な状況でも逃げず、諦めず、次々と思いつく『名案』を乏しい予算で進めて行く主人公を追って、読者も右往左往させられます。この熱意で仕事もできたら稼げるだろうにねー、でもそもそも発端のいかさま賭博をしちゃうところがダメなんでしょうねー。
練られた展開で、残り少ないページ数でもまだまだ何かが起きるジェットコースター・サスペンス。伊坂幸太郎やジェフリー・ディーヴァーを思わせる、とまで言ったら褒めすぎですね、ファンですので許してw
でも十分に、板倉もお笑いも知らない本好きの友人に、こんな新人いるよと勧めたい一冊です。
もったいないのは、冬の話で終始寒がってるのに4月出版なことと、分厚さw 小ぶりのハリーポッターかという存在感で1700円は平積みになりにくいし、通りすがりに気軽に買える本じゃないですよね。面白いのに!(ハードカバーじゃなく、京極堂シリーズ的装丁にならなかったのかな)
ちなみに、前作で丸出しだった個人の好み(じゃがいもゴロゴロカレーw 銃のうんちくw)の出方は、もっとソフトになってます。便利なライトやスタンガンの銘柄指定ぐらいなら物語の邪魔じゃなく微笑ましく読めました。
猟奇的な暴力描写はあるものの、そこがメインではないし(時に笑いどころですらあります。そうだ!◯◯で稼ごう!ってw ←いちおう伏せます)
動物や女子供への気遣い、家族とのやりとりなどはやはり暖かい人柄が滲みでていて、穏やかな読後感も気に入ってます。同じ二村と修平でまた事件に巻き込まれて欲しいくらいです。こんどはデブの修平も大活躍とか。
でも本業インパルスの活躍を願うとコント作るのが先ですよね。
ピン活動がインパルスに刺激を与えた様に、この執筆活動も芸人板倉俊之の良い糧となるのでしょう、これからも板さんから目がはなせません☆
ちなみにじゃすみんの「トリガー」評はこちら
(追記 「月の炎」評はこちら)
めっちゃ面白いですよね。
板倉さん、私が思ってた以上にすごい人なのかもって思いました。
このクオリティーの作品を書き続けることができたなら、マジ直木賞とか取れそう(ファンがそんなこと言っても、もファンの欲目と笑われるだけでしょうが(笑))。
でも、世間の反応が薄いのがちょっと歯がゆいです。
分厚いから、敬遠されて、なかなか読んでもらえないのかもしれませんね(あるいは、分厚いから、皆さん、まだ読み終わってないのかな?)
twitterでは、「蟻地獄」の贈呈を受けたらしい文藝評論家の陣野俊史さんとか小説家の道尾秀介さんとか、分厚いのにひいておられた感じでした。こういった方々がどんな感想をもたれるのか興味津々なのですが、結局、読んではもらえないかも・・・(泣)。
分厚いわりには軽くって、装幀は、とってもかっこいいと思うんですけどね。
タレント本コーナーに置いてある本を見渡すと(いっぱいあるいんですよねぇ)、分厚さといい文字量といい、「蟻地獄」は確かにちょっと異色かも。