ワインを愛した父と、故にそれを憎む息子。
「美味しんぼ」路線かと思いきや、あっさり父死亡で20億円を巡る遺産相続争いに。それもワインの銘柄当てで……って、めっちゃ青年漫画なシチェーションですが
「要りません」
と言い切る淡泊な息子、雫(シズク)くん!!それじゃ話が終わっちゃうじゃないですかー!!

ビール会社に勤務し、ワインは飲まないと20才で決めた、という彼をソムリエ見習いからホームレスから某レストランの悩めるシェフから、寄ってたかってワイン対決の土俵に向けて押し出していく、巧まざるチームワークが楽しかったです(笑)

どんなに嫌でも、そこは天才ワイン評論家の息子。
繊細な味覚と鋭敏な感受性、記憶力は天性のもの。一口も飲まずに香りだけでもワインを語る。しかも、門前の小僧ならぬ同じテーブルにいた息子、習わぬデキャンタージュやマリアージュを実学していましたよ。

そしてついに、誓いを曲げて口にしてみれば……瞬時に周囲がお花畑に(笑)
これが「ミスター味っ子」的に笑いどころなだけじゃなく、じゃあ、母の墓に供えられたワインは、ちゃんと花束のつもりだったのかと、今更に気づかされて泣きどころに。上手いなあ(原作通りなのでしょうか?)

子供のジュースですら、料理に合わせてマリアージュ(料理との相性)を考えていた父。でもいつもその深い理由は教えてくれない。
なら、この訳の分からないワイン勝負にも、養子縁組で対決相手になった「兄」(田辺誠一のワイン評論家が、変でいいわ。「月下の棋士」を彷彿)の存在にも父なりの意味があるのか?
20億円はどうでもいいまま、勝負は続けることにした雫。初回当然のように負けでしたが、この先どんどんと力をつけて行くんでしょうねえ。そして32才で若くして亡くなった母の記憶等々、折に触れて語ってくれそうです。

「ハチワンダイバー」とは逆に、頭でっかちな解説役の仲ちゃんはおたおた可愛いです。ちょっとやせた?
悪そうな内田有紀や、ホームレス&ワイン評論家ないつもの竹中直人など、いかにも漫画な脇役も楽しむことにしました。

しかし、父に連れられて滞仏経験もあるんだろう雫、フランス語の台詞も多くてこれがスイス育ちの水島ヒロじゃないのがとても残念。仏語の童謡を歌い出すところなんて、堅い亀梨くんは痛々しかったよー。
CG地味。もっと花は華麗に出来なかったのかな。雫のデキャンタージュだって、CGでもっと華麗なワインの糸をきらめかせてほしかったですね。