う、うん。最後まで見ました。
 家に縛られやりたいことも希望もないエリート会社員冬吾(工藤阿須加)が、母の決めた婚約者春(桜田ひより)の死をきっかけに、密かに好意を抱いていたその姉夏美(高橋ひかる)と行動するようになり、家から離れ自由に生きる道を選ぶことになる…。
 と冬吾を中心に見ていれば満足な実写化でした。工藤阿須加では原作より年齢はかなり上がったものの、覇気のない持ち味が親の言いなりで生きてきた男にはぴったりかと。交通事故も、押されてもいないのに轢かれてたしw
 春ちゃんもいたいけ可愛かったですね!
でも実は、自分の死後を思い悩むドロドロした気持ちも抱いていて。特に大好きな冬吾が、家同士の取り決めで婚約しただけに、相手を姉に切り替えてしまうのではないか、それぐらいなら姉を道売れにとまでの苦悩をブログに綴っていたのでした。

 記名はないけれど、通院日や検査日の一致からもう絶対に春のブログ!
と、断言できるほど春の診察には何をおいても必ず付き添って記録して励ましていた姉の異常な愛情をもっときちんと描いておいてほしかったんですけどねえ。
『恋人も作らず、進学も就職も妹の為に選んだ』
とは、するっと冬吾の口から語られるだけ。せっかくの連ドラ、それを印象付けるような交際お断り場面を入れても良かったのになあ…。 繰り返される幼い日の約束
「ずっと一緒に住もうね!」 
これ自体は誰でも通る道だから。それを大人になっても本気で願っていて妹しか好きじゃなくてこれ性的にもやばいのではと本人も思っていて……なのに、妹の婚約者とお付き合いしているところでの罪悪感じゃないですかああああ! その前に、春のことを知りたすぎて、生前デートした場所に連れて行ってくれと頼むトンチキが挟まるわけですが。 ヒロイン夏美が普通に可愛らしく、原作の自転車ヒョイっと担ぐようなガサツ感もないので 益々単にデートでしたわ。 
 原作小西明日翔の真骨頂は、気迫、激情。
「辛い時ほどよく笑う」
ようなギリギリの心理状態の人を演じさせるには、若い女優さんの演技力というよりは撮り方や演出が淡々としすぎていたんじゃないかなあと。

 春がいないなら死にたい夏美、君が死んだら僕も死ぬ、と冬吾。それは春が悲しむから困る……という妙な三竦みでいるうちに夏美は、春を理由にせずとも冬吾の無事を祈るようになってしまうのですよね。
 ラストはそれぞれに家を出て、冬吾は家と母親(高島礼子)から、夏美は父親と春から、解き放たれて生きてみるのでした。

 しかし、夜の待ち合わせで当面の宿泊先を心配しながら終わる原作と、明るい光に包まれて終わるドラマ。それだけでも印象違いますが。ドラマでは手を繋いで歩く2人を、ニコニコと春も見守っていているんですよ。完全に許された感。そんなあ。
 春が生きていたら決して喜ばない選択をした自分たち。ふりかえっても呪う春がいないということは、春が死んでしまったと認めることでもあるジレンマ。そんな決して抜けない棘を抱えながらも、騒がしく逞しく生きていこうとする夏美が好きだったのですが…。 原作知らずに見た方が楽しめたかもしれませんが、その場合最後まで見るほど惹かれたかよくわかりません…。