ナイス、ジュヴナイル!

小説家板倉俊之の新作です。
トリガー」では各県に一人殺人許可者がいるというパラレル日本が舞台、銃や世界設定の説明に行を費やしながらも根幹は『他人様に迷惑をかけるな』という強い正義感にもえる作品で、続く「蟻地獄」でも裏社会やとんでも殺人鬼と戦いながらも主人公は決して友人を見捨てない、「走れメロス」もかくやという正義の物語w 悪ぶってもいい人なのわかるよ、とファンは感涙にむせび泣いては誰かに読ませたい、どう勧めようと逡巡したりしたものでした(キモくてすみませんorz)
そこに爆誕したのが、まさに真っ向から正義を問う物語。これは勧めやすいわー。学校の図書館に置いてもグッドですよね。

舞台は普通の小学校、主人公の弦太も普通の少年です。訳あって片親なだけの。
物語の始まりは、タイトルにもなった日蝕の観察授業から。あの金環食の時に着想を得たのでしょうか。実は日蝕そのものはなくても事件は成立するのですがw そこにモチーフを取り入れ構成するのが小説ってものでしょう、終盤にも印象的に使われナイスでした。屋上に子供達を立たせ、町を俯瞰させた導入も同様に、素晴らしく小説。先生の熱心さ、生徒の様子、裏山の地形もよくわかるじゃないですか。
その裏山で遊び倒す様子がまた溌剌と楽しそうで、ぐんぐんと引き込まれます。そうそう、ランドセルって案外クッションになるよねw リコーダーは外しておかないとねw
全財産の小銭を握って、こども相手の店に向かう高揚感w(ミニ四駆大プッシュw 今年も大会MC来ますね!)

そんな事件といえばウサギの逃亡ぐらいな学校で、同級生の家が燃え、飼育小屋が全焼します。大学生の”師匠”を巻き込み、尾行に張り込みにと犯人探しに萌える弦太たち。友情、喧嘩、恋w 大人には探偵ごっこと思われても弦太たちは真剣で、やがて明らかになる真相は……。

終盤、日記での説明が冗長に感じましたが、その分こどもだけで全部解決したりせず警察もお仕事していた安心感もありましたよね。
火災現場で殉職した父の、正義の教えを貫いた主人公。でもその結果が、必ずしも良かれと思った通りではない、責任を追いきれることばかりではないと苦くも学んで、また一歩、少年は大人に近づいていくのです。

読後感も爽やかでした。