「僕がこの手で殺します」

あの判決もこの記者会見も、覚えがあります。ニュースで見ました。反面、私にとっての町田さんはいつでも「遺族」で「被害者の夫」で、彼にも仕事や日常の生活があることを考えたこともありませんでした。ただでさえ気の重い題材であるのに、自らも彼らに好奇の目を向ける「世間」でしか無かったことを思うと情けなくなります。

あの光市母子殺人事件、をwowow が淡々とドラマ化。

殺害や陵辱の現場を描写せず(詳細は裁判用語で解説)、遺骸を抱きしめての愁嘆場も映さない姿勢にとても好感が持てます。代わりに繰り返し思い出される奥さんと娘さんはいつも笑顔で、美しいからますます哀しい。
当初はなんと犯人扱いされ、不慣れな裁判への戸惑いや憤りがまず描かれていきます。

ひとり暮らし、洗濯物を干して、思い出の場所を1人で訪ねて、取材で来た記者を夕飯に引き留めて。注目される身で、より一層きちんと暮らそうとしている彼が、何年も何年もかかる争いに、海に向かって叫んだり遺書を書いたりと壊れそうになっていくのを、時に叱りながら見守り支えていく周囲の思いやりにも胸が熱くなりました。

それにしても「ちょうちょ結び」だの「母のように」だの、最後の弁護団は腹が立つ。本当にどうして仇を討ってはいけないのかさっぱり分からなくなってくるのですが、彼を支えるメンバーの中にも賛否両論がある所は複雑です。

最後、江口洋介記者が書き上げた自らの手記を読んで、礼と共に、ただ普通に暮らしたかったと延々と語る所は私も記者と一緒にただただ泣いてしまいました。陳腐な台詞だけど、当たり前の日常がどんなに大切なものなのか身にしみます。……で、一目散に恋人に会いに行く記者さん(ソウイウモノカナ ^^;;;)

遺族を巡る環境が改められ、死刑判決を勝ち取り、町田さんの戦いには区切りがついたのでしょうか。義母さんが語られた様に、幸せになって欲しいです。 

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